続・アスピリンのお話し

昨日、フェイスブックページでもアスピリンと喘息のお話を投稿いたしましたが、最近もっぱら話題になっているのが大腸がんの予防効果についてではないでしょうか。
解熱鎮痛薬として知られる「アスピリン」の大腸がん予防効果を確かめる7,000人規模の臨床試験を、国立がん研究センター(東京都)や大阪府立成人病センターなどのチームが始めたという記事が掲載されています。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=127097

アスピリンは、世界で初めて人工合成された医薬品と言われています。アスピリンの原料であるサリチル酸は、19世紀に「柳」の樹皮から分離されました。
ギリシャ時代から柳に鎮痛作用があることは知られており、柳の爪楊枝には歯痛を鎮める効果があったという人もいたそうです。

このサリチル酸には素晴らしい鎮痛解熱効果がありましたが、胃腸障害が甚だしいという副作用があり、それを克服するためにアセチル化されたアセチルサリチル酸、つまりアスピリンが登場しました。
バイエル社によって商標登録され、そして1900年には錠剤化されています。115年も前のことです。
アスピリンは今でも医療現場で使われています。歴史があり、世界中で今でも使用されている薬というのは、それだけ副作用や効果がわかっているということなのですが、その作用機序が判明したのはなんと1971年で、プロスタグランジンという物質の合成を阻害すると解わかりました。臨床的な有用性は十分に解っていたが、その機序は70年後にやっと解明されたということです。
さらに少量のアスピリンの服用は、血小板機能を抑制して血栓の形成を妨げることが判明しました。
血小板は血液を固まらせる作用を持つ血液内にある成分です。その作用を弱めると血管を閉塞させる血栓の形成を弱めるので、閉塞性の血管病変には有効です。同じ理由で、動脈硬化症や深部静脈血栓症、エコノミークラス症候群にも有効とも言われています。

アスピリンが330㎎含まれている錠剤の効能効果は、「頭痛,歯痛,月経痛,感冒の解熱,関節リウマチ,リウマチ熱,症候性神経痛」なのに対して、100㎎含まれている錠剤の効能効果は「心筋梗塞 虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA),脳梗塞)における血栓・塞栓形成の抑制、狭心症(慢性安定狭心症,不安定狭心症)、心筋梗塞、冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術、(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制、川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)」となっています。
同じアスピリンでも服用する量によって、効能効果がこのように違います。

さらに今回の臨床試験の結果次第によっては、大腸がんの予防効果が増えるのかもしれません。
アスピリンの素晴らしいところは、こんなに様々な作用が見込まれているのに薬価が安いということです。
健康保険で3割の負担でも、1日1回100㎎の服用であれば1ヶ月で数百円以内の自己負担で済んでしまいます。

ではみんなで服用すればよいかというとそうはいきません。
フェイスブックページでも投稿しましたが、副作用として喘息や少なくなったとはいえ胃腸障害が全くなくなったわけではありません。人によっては腎機能障害などが出ることもあります。
服用するときには必ず医師と相談して、利点・欠点、効果と副作用を理解してから服用するようにしましょう。(K)

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